東北学院中学校・高等学校

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年頭所感-阿部恒幸校長-

2020年01月06日

新テストは評判が悪い?

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中学校・高等学校
校長 阿部恒幸

 皆さま、明けましておめでとうございます。旧年中の皆さまのご理解とご協力に感謝申し上げるとともに、本年もよろしくお願い申し上げます。
 さて、最後の大学入試センター試験が1月18日から行われますが、現在の大学入試センター試験に代わって2020年度から実施されることになっている大学入学共通テストのうち、英語民間試験の活用は昨年11月1日に延期が発表されました。また、これに影響されてか、国語と数学で導入予定の記述式問題に反対する立場の人々の勢いが増し、11月6日には採点の公平性などに疑問があるとして現役高校生らが約四万人分の署名を文部科学省に提出しました。
 そもそも今回の大学入試改革は、2012年8月文部科学大臣が中央教育審議会に対して諮問したことに端を発します。そして、2014年12月22日に出された答申は、そのタイトルの副題「~すべての若者が夢や目標を芽吹かせ、未来に花開かせるために~」が希望を持たせる言い回しだったことや、「我が国は今後、未来を見据えて教育改革に最大限の力を尽くさなければならない」という強い決意を表明したことから、当時好意的に受け止められた方も少なくなかったように記憶しています。
 私もその一人で、好意的と言うよりむしろ今度こそと期待を持って受け止めました。
 と云うのも、ご存知のとおり高校の教育改革の必要性はこれまで幾度となく叫ばれてきました。しかし、その都度高校教員は「大学入試があるから変えられない」と「変えないことを正当化して」きました。ところが今回の改革は、高校教員の言い訳を許さない内容だったことで、今度こそ変わることが期待できると思ったからです。
 これまでのグローバル化にAI、IoT、5Gなどが加わり、現在世の中は大きくかつ目まぐるしい速さで変わろうとしており、子供たちが生きていく時代において必要とされる力はこれまでの敎育で十分に育むことが出来るとは到底思えません。ですから今回こそは、最後のチャンスとの思いで、たとえ痛みを伴ったとしても思い切った改革を断行する必要があると思いますし、改革断行のためにはそれに水を指すような発言は私自身は絶対にしないと心に決めています。
 何であれ全く問題のない完全な制度はありません。
 答申にも、「従来型の『大学入試』や、その背景にある、画一的な一斉試験で正答に関する知識の再生を一点刻みに問い、その結果の点数のみに依拠した選抜を行うことが公平であるとする、『公平性』の観念という桎梏は断ち切らなければならない」とあります。また、アメリカでは最近、「経済的に余裕があって受験対策にお金をかけることのできる裕福な家庭の子供の方がSATスコアを伸ばすことができるのは公平でない」という理由でSATスコアを大学入試から外す動きがあるという話も聞きます。
 大学入学共通テストは、1点を競うのではなく、このくらいあればいい、合格のための必要条件、といった考え方があってもいいのではないかと思います。
 最後に、昨年9月9日付け「日本教育新聞」の社説の一部を紹介して拙文を終えたいと思います。
 「『新テスト』は評判が悪い。実施前から延期論が展開され、大きな混乱もなく実施された後でも、廃止を含め見直すべきだと指弾された。この『新テスト』とは1990年1月に初めて実施した『大学入試センター試験』のことである。‥(中略)‥今また『新テスト』が混乱していると指摘されている。」