東北学院中学校・高等学校

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年頭所感-大橋邦一校長-

2019年01月04日

未来の学びを描く

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    中学校・高等学校
    校長 大橋邦一

 謹んで新年のお慶びを申し上げます。旧年中の皆様のお祈りと温かいご支援に心から感謝を申し上げます。本年も宜しくお願い申し上げます。
 2017年度から始まった新コース制も2年目を迎え、いよいよ2019年度は中高すべての学年が新コース制で学ぶことになります。生徒諸君の奮闘、先生方の熱心なご指導、そして学内外からの篤い祈りとご支援により一歩一歩と結果が出ております。来年度末の進学実績等、未来の地の塩、世の光の活躍を楽しみにしているところでございます。
 さて、世界ではグローバル世界に自国第一主義が対立し、難民問題、格差社会の問題がさらに深刻になっています。また国内では少子高齢化、労働人口減少、外国人労働者の受け入れなどの課題が先鋭化してきました。こうした課題に第四次産業革命とも呼ばれるようにIoT(Internet of Things)、AI(Artificial Intelligence)によるイノベーションによって、持続的な社会を支える経済成長が求められています。
 昨年、2018年、文部科学省は第三次教育振興基本計画を策定し、65歳以上が3人に1人となる2030年以降の社会を見据えた教育政策を発表しました。そこでは未来社会を“Society 5.0”と呼び、超スマート社会を生き抜く、ビッグデータによる人工知能(AI)を駆使して技術革新を続ける資質と能力を持つ人材の育成が謳われています。
 また、ほぼ時を同じくして経済産業省も教育に関する有識者会議である「未来の教室」とEdTec(Education×Technology)研究会から教育に関する第一次提言を受け発表しました。内容は「50センチ革命」など自分の身の回りのものから良くしていく、やはりイノベーションを推進する人材の育成となっています。
 これらの新たな教育政策に共通しているのは「公正に個別最適化された学び」(文科省)、「『個別最適化』を進め、効率化する」(経産省)とあるように、これまでの学校の集団学習ではなく、個々人の興味関心や好奇心に寄り添い、ICT(Information and Communication Technology)を駆使する主体的、対話的な深い学びです。
 こうした教育政策には有識者からの批判もありますが、例えば私立の通信制高校は5年間で校数は倍に、生徒数は約30%増加しました。特に2016年開校したネットによる通信制高校「N高等学校」は2019年4月から仙台キャンパス(通学コース定員200人)を開校します。研修旅行、職業体験、文化祭もあります。そして同じく今春から「N中等部」も開校します。近隣の公立中学校に在籍しながら、義務教育をネットで学べるようになるのです。
 本校が新コース制を始めたのは、生徒の偏差が広くても個々人の希望に沿った進路を実現するためでした。パソコン一人一台環境を実現し、ICT教育を先駆的に推進しているのも個々人の学びに寄り添うためです。もう学びは人に強いられるものでも、受験だけを動機にして学ぶ時代でもありません。それは同時に、どこに帰属しているから自分の未来が保証されるという時代ではないことも意味しています。時代は「アクティブラーナー(学び続ける人)」を求めています。そしてネットの世界はリアルな世界とつながり、彼らの未来へとつながるのです。
 昨年の夏、新コース制1期生である中学2年生が「児童労働」についてネットで調べ、発表しました。その中で特別選抜コースの生徒たちは学院祭での売上(かき氷等)を「こども食堂」に寄付することにしました。さらに彼らは自ら近隣の「こども食堂」を探して、直接訪ね食事の準備手伝いや小学生に勉強を教えたいと志願し、リアルな世界を体験したのでした。
 私も彼らの様子をひと目見ようと訪ねました。お互いに環境が違ってもすぐに打ち解け無邪気に遊んでいました。ひょっとすると彼らは「こども食堂」がある理由もよくわかっていないかもしれません。しかし、私は、ネットの世界からリアルな世界へと一歩足を踏み出した彼らを見て、彼らのやさしさ、たくましさ、そしてしなやかさに未来の学びを感じました。
 どうか、これからも新しい歩みを始めた東北学院中学校・高等学校の生徒、教職員一同、宜しくお願い申し上げます。