東北学院中学校・高等学校

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2015年 年頭メッセージ【松本宣郎理事長】

2015年01月05日

150105-1.jpg 新年おめでとうございます。
 旧約の詩人は歌います。
 「新しい歌を主に向かって歌え。
 全地よ、主に向かって歌え。
 主に向かって歌い、御名をたたえよ。
 日から日へ、御救いの良い知らせを告げよ。
 国々に主の栄光を語り伝えよ。諸国の民にその驚くべき御業を。」(詩編96)
 東北学院が2015年という年に踏み出します。皆さんにはそれぞれにご家族や親しい方々と年末年始の休みの時を過ごされ、今日、仕事人として戻って来られました。本学院の使命とする営みは、詩編で歌われたように、人間の思いを超えて、神が定め、守ってこられた営みです。私たちが安んじて仕事が出来ることを信じましょう。
 世界は決して平穏ではありません。神の御業に目を向け、神を信じる力が弱り切っているかのようです。戦争も差別も、富の格差も、人間関係の希薄化も、人類のもたらした過ちです。ことに他者を認め、許容する心、寛大さとか思いやりなど、要するに愛ということ、がなおざりにされ、家庭・学校・職場、そして社会、国際間の関係にも、よそよそしさとか冷たさといった現象があふれています。
 学校に課される務めは重要です。これらの世界的難題を認識し、それに立ち向かう力量を持ち、何よりも苦しむ人たちの痛みを共有し、彼らに奉仕できる心をもつ人材を育てる責任があるからです。つまりそれほどに私たちの務めは重く、深く、大切で、かつ急がれているわけです。
 繰り返しになりますが、わが学院の教育の業は、神が定め、守られてきました。そうでなければ129年目を迎えることなど出来なかったはずです。これまでの道を歩むこと、これを基本として間違いはないのです。教職員の思いは一つであります。学生・生徒・園児ひとりひとりをかけがえのない存在として認識し、育てることに全教職員が集中することがそれであります。
 昨年1年、学院は多くの仕事を果たしたと思います。成功したこともあり、つまずきもありました。限界のある人間の仕事には過ちと不十分さがあります。それは丁寧にチェックし、修正してゆけばよいのです。ただ、ミスを見逃してはならず、他者の責任に任せるのでなく、自らが引き受けることです。
 昨年法人に「企画課」が置かれたことは、新年の構想のために重要なことの一つであると思っています。法人全体を俯瞰して、中長期的な構想と計画を立てる部署と位置づけられます。まだ作成中ですが、学院の諸課題をリストアップし、来年度(2015年度)の東北学院事業計画を提示して、学院の歩むべき道を明確にしたいと思います。わけても、本学院が全体的な将来構想を打ち出すこと、その遂行のために学院内すべての組織が有機的に連動して働くこと、について不十分である、としばしば指摘されています。この課題を今年はぜひ克服したいと思います。昨年始動した法人の経営戦略会議、企画委員会、そして大学の教学改革推進委員会は、まさにそのために構想立案と、事業の進捗状況の情報を共有します。法人と大学の学長室その他の部署にも改編や新設置が施されました。いずれの部署であれ、持ち場に課された務めをよく認識し、学院全体のわざのどこにそれぞれが位置しているのか、を意識しながら働いてほしいと思います。
 法人としては、これも昨年掲げた経営理念を念頭にして、法人の社会的責任を果たしてゆきます。教職員倫理規程を策定したいと思います。財政見通しを常にチェックし、魅力ある学校づくりと学生生徒確保の計画策定に協力し、それを支えます。人事については現在進行中の人事改革構想を着実に進め、適切な人材配置を行い、PDCAの実践を意識した風通しの良い職場環境を実現させてほしいと願います。給与体系の見直しの必要性も高まるかも知れません。いずれのキャンパスの施設も多くが耐用年限を超えつつあり、計画的に修理し、また必要の生じた新しいインフラ整備も進めなくてはなりません。
 大学は、北地区新校舎建設が本格化する年です。土樋キャンパス新構想の具体化に着手する年でもあります。都市型ユニヴァーシティを目指し、土樋から五橋を仙台のカルティエラタン、文教タウン、伝統と文化の街にして行こうではありませんか。泉キャンパスの各学部を土樋に統合する計画は予定通りですし、大きな土地を獲得できれば工学部も包摂する見取り図が出来てきます。
 この計画の進行にあわせて、魅力ある大学としてゆくための改革が求められます。地(知)の拠点整備の事業を進めて地域貢献を果たし、教育研究の更なる充実を目指さなくてはなりません。学部学科の再編を考えるときです。近年政府文科省の方針は大学理工系への重点シフトです。受験生と保護者の間にはそれ以前に抜きがたい理系信仰があります。本学は工学部を有しますが、基本的には人文系教養教育を基盤としてきた大学です。TGベーシック、英語教育の改革が実施される今年、その基盤を生かしつつ、現代のニーズにも応えうる更なる新構想を打ち出したい、教職員には大いに知恵を絞っていただきたいと願うものです。
 少子化が進み、大学入試も大きく変わると予告されています。多くの大学で改革が進められています。学校教育法の改定への対策を実施して、大学の行動を迅速化させられるようになるでしょう。社会の動静に的確に対応する改革を行いたいと思います。
 もちろん計画がすべて拡大のみで実行できるわけではありません。経費節減につとめ、いわゆる「痛みを伴う改革」に踏み込むことも覚悟しなくてはなりません。ことにきわめて厳しい状況にある大学院研究科は、構想策定を求めているところですが、7研究科の統合再編まで見据えるべき時ではないか、と思っています。
 学院中学校・高校では教育の質的転換のための作業が着手されています。「TGスタンダード」原案をさらに整理して、魅力ある学校として広報できるものにレベルアップしてほしいと思います。教育内容の充実が進学、スポーツの実績をもたらし、生徒確保につながる好循環を実現したいものです。東北学院中高校でなければできない教育理念を、福音主義キリスト教を基盤としつつ、現代的なニーズにも応えて打ち出さなければなりません。
 榴ケ岡高校も、個性を明確にした教育理念をマニフェストとして鮮明にしてほしいと思います。東北学院大学進学を中心とした榴ケ岡の教育方針が進められているのは望ましいことだと思います。キリスト教中等教育にとって文科省の政策による「道徳の教科化」への対応が喫緊の課題となっています。教育同盟の対策協議と呼応しながら、聖書の教育を守り続けたいと思います。
 特に高校と大学との接続をさらに密にしなくてはなりません。そのための協議が進められ、キリスト教教育と情報関係授業での工夫が実現する予定です。それにとどまらず、キリスト教学校としての一貫した教育方針を掲げなければなりませんし、そのための推進機関についても考慮したいと思います。
 幼稚園は建学の精神を着実に幼児教育に生かす方針を貫いています。これを変わらず続けてほしいと願います。しかし行政の方針への対応については、社会の視線をも視野に入れねばならず、誤ってはならないところです。法人に幼稚園担当の小委員会を設けて情報を逃さずに進めたいと思います。
 いささか長きにわたってしまいましたが、課題はまだ少なからずありますし、一方で今年、年度がかわる時には人材の交替が例年以上に大きいことが予測されます。周到な引き継ぎがなされ、新しい力が十分に発揮されることを願い、かつ確信しています。
 以上をもって年頭のメッセージといたします。ありがとうございました。

理事長 松本宣郎